突然の父親の死により、経営難の会社を継ぐことになったSさん。全盲の妻と幼い息子との暮らしを支えるために、苦しみながらも奔走していたSさんを救ったのは、書店で偶然手にした一冊の書籍との出合いでした。
S.Yさん(東京都)
月刊「幸福の科学」
367号より転載・編集
突然訪れた転機
1989年、私が35歳のときのことです。父が営む小さな印刷会社で働いていた私は、都内の大学在学中に学んだスペイン語を学び直したくて、仕事を辞めて単身渡米。アメリカの大学に通い始めました。
留学中に、幼馴染だったIと結婚。妻は20代で緑内障の手術を受けた際に視力を失い、全盲になってしまいましたが、結婚を機にアメリカに呼び寄せ、一緒に暮らしていました。
事態が急変したのは、1991年の12月。私が東京の母に近況を聞こうと電話をしたときのことです。
「Y、お父さん、もう長くないみたい……。こっちに帰っておいで」
「えっ……?」
父が喉頭がんを患い、余命が数カ月しか残されていないことを告げられたのです。私は母の言葉に戸惑いながらも、大学を中退し、年が明けてすぐに、妻と2人で日本に帰国しました。しかし、その3カ月後、父は帰らぬ人となったのです。
(どうして、こんなに突然……)
私は、予期せず家業を引き継ぐことになりました。しかし経営は傾き、多額の借金を抱えている状態です。さらに、そのとき妻は身重で、出産を控えていました。
(これから一体、どうすればいいんだ……)
アメリカでの幸せな生活から一転、将来の不安を抱えることになってしまったのです。
重くのしかかる現実
それ以来、家族を養うために奔走(ほんそう)する生活が始まりました。私は、もともと教育分野に興味があったので、印刷業の傍ら、学習塾を始めてみましたが、現実は厳しく、1年ほどで撤退することに。
子育ても大きな問題の一つでした。妻は目が不自由なため、幼い息子に十分な注意を払うことができません。
「あっ! 危ない!」
息子が歩けるようになると、部屋のなかでもよく転ぶので、気が休まりません。私は息子が怪我をしないように家具の角を削り、常に息子から目を離さないように気をつけました。また、離乳食をつくったり、息子を公園に連れて行ったりと、世話をするのに忙しく、仕事が手につかない状態が続きます。
(なんで俺だけ、こんなに大変な思いをしなきゃいけないんだろう)
イライラとした気持ちが募りました。
(なんとかこの状況から抜け出したい)
私は次第に、宗教書や思想書に心の救いを求めるようになっていったのです。
一冊の書籍との出合い
あるとき私は、近所の書店に立ち寄り、一冊の書籍を手に取りました。
「みなさんは、人生とは、人間がこの地上に生まれおちてから死ぬまでの、数十年間のことだと考えているのでしょうか」
それは、
『太陽の法』
という書籍でした。
「私たち人間は、はるかむかしから、永遠の生命をもって生きております。そして、何度も何度も、地上に生まれかわっては、人生修行を積んでいるのです」
(これは……)
ページをめくるほどに、何か感じるものがあり、私はその書籍を購入しました。自宅で再びひもとくと、どんどん内容に引き込まれていきます。そこには、人間は何度も生まれかわりながら魂を磨いていることや、宇宙や地球が神仏の意志によって創られたこと、そしてその成り立ちまでが明確に語られていました。
また、読み進めるうちに、人間の肉体と魂は別であり、たとえこの世で心身に障害があっても、あの世に還れば魂は健全だということを知って衝撃を受けたのです。
(この世では障害者でも、魂に障害はない……。じゃあ、Iちゃんも……)
私は人生の根本的な問いに対する答えが説かれた『太陽の法』を読んで、この教えに沿って生きていけば、いつか必ず道が拓けるのではないかと感じました。
「自らが創造した意識・魂が、どんどん進化、発展、向上して、自分をめざして成長してくるのを、仏は、かぎりなくやさしい愛情の眼でもって、見守っておられるのです」
(そうか。神仏はいつも、人間を見守ってくださっているんだ……)
『太陽の法』につづられた言葉を読むと、何とも言えない温かな気持ちが込み上げ、焦りや苛立ちで波立った心が、スーッと静まっていきました。
もっと幸福の科学の教えを学びたいと思った私は、地元の支部を訪ねて入会。すぐに支部の仲間たちと一緒に教えを弘める活動を始めました。妻にも書籍を読み聞かせ、夫婦で教えを学ぶようになったのです。
動き始めた運命の歯車
しかし、相変わらず経営は厳しいまま。なんとか生活していくために、清掃の仕事を始めました。早朝から昼ごろまで働き、帰ってきて息子の面倒を見ながら、その合間を縫って、本業の印刷の仕事をします。
早く収入を増やさなければと焦るあまり、妻にきつくあたってしまったことも……。
「Iの目が見えてれば、俺がどれだけ助かるか」
私の言葉にひどく傷ついた様子で落ち込む妻。彼女の気持ちを考える余裕もなく、決して言ってはならない言葉をぶつけた自分が許せなくなることもありました。
そんなある日。私は、大川総裁の
『現代成功哲学』
(※現在は『成功の法』)
という書籍のなかに、次のような言葉を見つけました。
「私は、成功哲学のなかには、どうしても、『愛の思い』というものを含まざるをえないと思うのです。(中略)愛なき成功は、ほんとうの成功ではないのです」
(愛の思い……?)
また、 『仕事と愛』 という書籍には、こうありました。
「この世界に生きている愛の法則とは、まず、『他の人のことを考えて仕事をせよ』ということです」
それまで私は、義務感から父の会社を継ぎ、とにかく借金を返済して家族を養わなければという一心だけで働いていました。
(仕事に愛を込めるなんて考えたこともなかったな……。
愛を持って仕事をするということを考えてみよう)
それ以来、私の仕事の仕方は一変しました。
(どんな工程にすれば、できるだけコストを抑えて、良い製品を提供できるだろう)
いろいろ試して最善の方法を探しました。また、入念に確認作業を行って、必ず納期の前日までに納品し、難しい依頼にも、要望に応える方法を考え出して提案するように。
いつもお客様が喜んでくださる姿を思い浮かべながら、一つひとつの仕事を丁寧に行ううち、繰り返し依頼してくださるお得意先が増えていったのです。
信頼関係ができ、お客様のほうから、新しい取引先を紹介してくださることもありました。
すると、次第に売り上げが伸びて収入が倍増し、経営がうまく回り始めたのです。なんと、2年のうちに借金を全額返済でき、生活にゆとりさえ感じられるようになりました。
(ああ……。「愛の気持ち」がすべてだったんだ)
それまでは、自分一人で頑張っているような気でいましたが、「愛」や「感謝」について考え、仕事を通して実践していくうちに、自分がどれほど周りの人に支えられているかに気づくようになりました。
あるとき私は、妻との生活を静かに振り返りました。妻にとって、目が不自由ななかでの結婚生活はどれほど大変だったことでしょう。しかし、泣き言を言うでもなく、息子にミルクを飲ませたり、おむつを替えたり電話応対をして私の仕事を手伝ったりと、いつも一生懸命に、母として、妻として尽くしてくれていた姿が浮かんできたのです。
私は妻と結婚するとき、「自分が妻を守り、支えなければ」と思っていましたが、実際に支えられていたのは、私の方だった―。
(Iちゃん、ありがとう……)
障害に負けずに頑張る妻に対して、心から尊敬の思いが湧き上がってきました。
生涯現役人生を目指して
妻とともに幸福の科学で学んでいくうち、私は、「いつか、障害がある人を支える仕事がしたい」と思うように。その夢が叶ったのは、6年前です。家業を続けながら、精神障害者の自立支援を行うNPOで働き始めたのです。
障害を持って生きることの意味について、 『心と体のほんとうの関係。』 には、次のようにあります。
「生きがい、喜び、勇気、そういうものを他の人々に奮い起こさせるために、肉体的な障害を選んでいる人もいます」
障害があることは、一見不幸に見えるかもしれません。しかし本当は、自分の魂を磨いたり、他の人に勇気を与えたりできる、尊い人生を歩まれているのです。
そうした視点を持って、障害のある方に明るい言葉をかけ、心を開いて接していくと、驚くほど症状が改善することがあります。
ある失語症の方は、わずか数カ月で歌を歌えるほどに回復し、社会復帰を果たし、医師も「信じられない」と驚いていました。
私は幸福の科学の教えに出合って、仕事においても、家庭においても幸福を見いだすことができました。この幸福を、今度は世の中にお返ししたいと思っています。
そのために現在は、いくつになっても若々しく、人生を積極的に生きるための智慧が詰まった 『エイジレス成功法』 という書籍を励みに活動しています。このなかでは、歳を取ると、認識力や知識量、経験量は増えてくるので、何歳からでも新しい出発はできると説かれています。この教えを実践するため、思いきって、シニア向けのセミナーで講師活動をするなど、新たなことへのチャレンジを始めています。
私は、39歳で『太陽の法』に出合って以来、次々と発刊される大川総裁の書籍を読み続けてきました。そのおかげで、夫婦で手を携えながら、人生の苦難を乗り越えることができ、とても深い幸福を実感しています。
一人でも多くの方が、大川総裁の説く仏法真理に出合い、幸福な人生を歩まれることを心から願っています。
常勝の原点
『常勝思考(新版)』 (大川隆法 著/幸福の科学出版)第一部 常勝の原点より抜粋したメッセージ
試練から学び尽くす
自分がもし挫折のなかに置かれたり、あるいは、絶好調だったのにダウンしたりという試練の期間があったとしても、どうかそれをマイナスだと思わないでいただきたいのです。その期間にこそ、みなさんの魂は練られると同時に、人びとの心というものがわかるようになります。
「自分が、自分が」と思っていたところが、自分などいなくても、仕事が順調に動いていくのを見るに到ります。残念なことですが、世の中はそのようになっているのです。
サラリーマン社会は、誰かがいなくなっても、すぐに代わりが出てくるようになっていますし、「絶対に代わりはいない」と思われる社長でも、残念ながら、すぐに代わりが出来るのです。
すなわち、ほんとうは、自分ひとりの力で仕事をしているのではなく、多くの人たちのチームワークによって、仕事が成り立っているのです。つまり、自分が自己発揮できる前提には、他の人びとの力があるのです。それを忘れてはいけません。
したがって、この本を読んでいるさなかにおいて、挫折や逆境の真っただなかにいると思っている人がいたならば、どうか、過去の何年間、あるいは何十年間の自分の生き方を振り返ってみて、バランスを崩していなかったかどうか、また、自分の評価ばかりを考えて、他の人びとを評価することを忘れてきたのではないか、そうしたことを考えていただきたいと思います。
こうした見方ができるようになるということは、非常に大きなことなのです。人間が成長していくためのきっかけは幾つかありますが、ほんとうに底光りをしてくる人を見ると、やはり何らかの試練は通り越してきているように思います。試練を通り越して、それをみずからの力にまで仕上げた方というのは、光が出てきます。しかし、試練にただ押し流されている人というのは、どうしてもその影を引きずって、暗さが漂っているように見えます。
試練というものは、そう長く続くものではありませんから、要は、その間にどれだけのものを学べるかということが課題であって、学べるだけのものを学び尽くしてしまうということが大事だと思います。
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