のんびり長男にイライラ怒り、ため息ばかりの毎日

ママ

ほかの子と違って、ふらふらマイペースな長男。「どうしてできないの!」とイライラしては怒鳴ってしまう――。子育ての悩みのなかで、自分自身をふり返ったMさんのストーリーから、余裕を持って子どもと向き合うヒントをお届けします。
(Mさん/女性/月刊「ヘルメス・エンゼルズ」第134号より転載・編集)

体験談 百点満点のママになりたかった私が子育てで学んだこと

きちんとできない息子

息子のKは、いつものんびりマイペース。家でも外でも周りは気にせず、自分なりの楽しみを見つけてはニコニコとご機嫌で過ごしています。でも、それが、私のイライラの原因でした。幼稚園の行事参観は、行くたびにハラハラしっぱなし。みんなが揃って歌を歌う時に、息子は一人だけ楽しそうに壁のポスターを眺めています。夏のスイカ割りでも、みんな体操座りで順番を待っているのに、うちの子だけは窓の近くで寝転がっています。
ほかの子はきちんとできるのに、どうしてうちの子はできないのか。みっともなくてしかたありません。よそのお母さんから、「あそこの親子はダメね」と思われはしないかと気になってたまらず、息子への腹立たしさがこみ上げてきます。「もう! 何であなたはちゃんとできないのよ!」と、家に帰り着くなり怒りを爆発させてしまいます。

手のかかる毎日

ママ01

小学校に上がっても、息子は相変わらずマイペースです。朝の仕度も、私が声をかけるまで着替えもせず、ランドセルを前にぼんやりとしています。仕方なく、「さっさと着替えなさい!」「時間割は揃えたの?」「給食袋は!?」と、イライラしながら指示を飛ばして、何とか学校に送り出します。
「どうしてあの子はこれほど私の手を焼かせるの。こんなはずじゃなかったのに……」
思い描いていた理想的な子育てとはほど遠い毎日に、ため息ばかりがこぼれます。

私は「できる子」だったのに

私は、子どもの頃から、息子とは正反対の性格でした。いつも周囲の目や評価を気にして行動し、「あの子はできる子」という評価を得たくて、頑張りすぎるほど頑張っていました。一度注意されたことは二度と繰り返さず、常に百点満点じゃないと気がすまない。そんな子だったのです。それなのに、息子は私とは全然違う。周りの評価など気にせず、人と競争しようともしない。ガミガミ叱っても、本人はいつもニコニコと笑っています。私には、そんな息子が理解できません。私が理想としていたのは、周囲が百点満点と評価してくれるような母子です。しかし現実は、「困った息子」に手を焼いて、毎日怒鳴ってばかり――。「あの子は私を困らせる。イライラさせる子」と、私は、知らず知らずのうちに、息子のことを心の中で責め続けていました。

「どうせぼくにはできない」

ママ02

そんな日々の中、息子は、次第に何に対しても尻込みをするようになってきました。1年生の夏休み、アスレチックのある公園に連れて行った時も、いっこうに遊具に向かっていこうとしません。もともと息子は、体を動かすことが得意なほうではありませんでしたが、これまではそれなりに楽しそうに遊んでいたのです。
「ぼく、どうせこんなのできないから」
ちっともやる気のない顔で言います。そのうち、ちょっと困難にぶつかっただけで、すぐに「ぼくはどうせダメだから」と言うようになりました。いつもよりちょっとだけ高い鉄棒を前にしただけで、「ぼくにはムリだよ」とあきらめます。勉強のドリルで少し難しい問題が出てきた時も、「こんなのできない」と言って、すぐに投げ出してしまいます。やる気がしぼんでいくのが、目に見えてわかるほどでした。

不安でいっぱいの心が凪ぐ時間

「このまま、何事にも挑戦する意欲のない子になっていったらどうしよう」と、私の心の中は、息子の将来への不安と焦りでいっぱいになっていきました。ちょうどその頃、自分の時間が持てるようになったこともあり、幸福の科学の 支部 で開催される法話の視聴会に参加するようになりました。静かに法話に聞き入っていると、心に渦巻いていた焦りや不安が、少しずつ凪いでいきます。それは、まるでコップの中でかき混ぜられていた泥水が、ゆっくりと静止して、泥が沈み、水が澄んでくるような感じです。

「子育てがうまくいかない自分」も、許されている

あるとき、法話を聴いていて、このような言葉が胸にしみ入ってきました。
「人間は、仏の子であると同時に、この世では不完全に生きている、不器用な生き物であることを認めなくてはいけないのです。自分もそうであるし、他の人もまたそうなのです」
子どもの頃から、人に認められたくて頑張ってきたけど、うまくいかない子育てにイライラしてばかり。自分では認めたくない、そんなダメな私を、仏はあるがままに受け止めてくださっている――。「許されている、受け止められている」という感覚は、大きな安心感となって、私の心を穏やかにしてくれました。次第に、それまで目についてしかたなかった息子の行動も、気にならなくなっていきました。

自分は全然変わろうとしていなかった

家では、幸福の科学の本を読む時間が増えました。ある時、『 幸福へのヒント 』の中に、「子供は親の影、その心の影なのだから、子供を責める前に、まず親から変わっていこう」という言葉を見つけて、子どもを責めてばかりで、自分は全然変わろうとはしていなかったこの8年間を、深く反省しました。そして、あるがままの私を仏が受け止めてくださったように、あるがままの息子を、私も受け止めてみようと思ったのです。それからは、自分の心の中にある「ちゃんとできない長男」のイメージを打ち消す努力を始めました。「息子にはムリかも」「ダメかも」そんな言葉が心に浮かぶたびに、「違う違う、そうじゃない。あの子は大丈夫」と思い直すようにしたのです。

子どもを責めない体操の先生

ママ03

3年生になる前の春休み、近所の体操クラブの短期教室に参加しました。見ていると、その先生はできないことを決して責めません。それどころか、ちょっとした良い所を見つけては、どんどん褒めてくれます。
「体が柔らかいんだね。体操に向いているから、きっと上達するよ」
絶えず笑顔で励ましの言葉をかけてくれます。すると、運動が苦手だったにもかかわらず、短期教室のたった3日でさか上がりができるようになったのです。その後、体操クラブに入ってからは、もっと難しい技にチャレンジするようになりました。先生の指導を受けながら練習を繰り返し、失敗しても、失敗しても、あきらめず、歯をくいしばって必死に挑戦する息子の姿。
「あの子の中に、こんなに頑張る力があったなんて……」

子どものやる気を奪っていたのは私

「子供の頃のママよりも、ずっと鉄棒が上手だね」と言うと、彼はちょっと得意そうです。できないことを責められてばかりで、自分の良さや個性を母親に認めてもらえない。それは、子どもにとってどんなにつらいことだったでしょう。息子が自信ややる気を失っていった原因は、彼自身にではなく、私にあったのです。
「怒ってばかりのママだったね。それなのに、あなたは、いつもおだやかに笑ってくれていた。本当にごめんなさい。私に平和で優しい心を教えてくれて、ありがとう」
反省と感謝の気持ちが、胸にこみ上げました。

成長を慈しむことが子育ての喜び

息子は、器械体操の技がどんどん上達しました。
「今日さ、体育の時間に、ぼくの体操のフォームがきれいだって、先生や友だちから褒められたよ」
私には、その頑張りや成長が嬉しく思えてなりませんでした。やがて小学校を卒業し、中学に上がった彼は、「野球部に入る」と言い出しました。周りはみんな少年野球のチームに入っていた子ばかりで、初心者の息子がその中でやっていくのは大変なことです。「大丈夫、やってみたいんだ」と、自分の意志を持ち、新しいことに挑戦していく息子が頼もしく思えます。普段は相変わらずのマイペースですが、私にはない、彼の平和で穏やかな魂の持つ力を、強く感じるこの頃です。自分とは違う個性を受け入れてその成長を慈しむという、母親としての大きな幸福を、息子は教えてくれました。あなたのおかげで、ママは少し成長できたのではないかな、と思っています。

書籍で学ぶ その子の魂が求める方向に、伸び伸びと育ててあげよう

『じょうずな個性の伸ばし方』 (大川隆法 著/幸福の科学出版)より抜粋したメッセージ

それぞれの持ち味があり、それぞれの花を咲かせる

『じょうずな個性の伸ばし方』(大川隆法著/幸福の科学出版)

私は、基本的に、「親と子は、肉体的には遺伝子でつながっているが、それぞれの魂は別である」と考えています。そして、「魂が別である以上、子どもは、親が思ったとおりには必ずしもならない。子どもの魂が素直に伸びていく方向、子どもの魂の要請する方向に伸ばしてやるのが最もよいだろう」と思っています。
私には五人の子どもがいますが、子育てについて私が特に何かを言っているかといえば、何も言わないのが常態になっています。「なるようになるだろう」というか、「花には、それぞれの持ち味があり、ヒマワリはヒマワリ、アサガオはアサガオというように、それぞれの花を咲かせるだろう」と考えているため、自分から無理に「このように育てたい」とは、あまり思わないのです。

子どもの個性を観察する

「この子は、どういう個性を持っているか。この子の魂は何を求めているか。どのような傾向を持っているか」ということは観察していますが、基本的には、「その方向で伸びていけばよい」と思い、見守っているのです。教育に関して、私は、どちらかというと、わりに自由主義者です。実は、私自身も、そのように育てられてきました。親から怒られたことは、ほとんどありません。それで、非行に走らず、犯罪も犯さず、まともな人生を生きてきているので、「子どもは、『怒られたらよくなる』ものでもなければ、『怒られなかったら悪くなる』ものでもない」と思っています。要するに、「その子の魂が求める方向に、伸び伸びと育ててあげる」ということが最も大事ではないでしょうか。

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