この記事は、隔月発刊の機関誌 「ザ・伝道」 第151号より転載し、編集を加えたものです。
Tさん(40代・女性)
家庭の平安を取り戻すまで
飛び交う罵声、壊される壁。家庭が荒れ、私は20年以上に渡って、心安まらない日々をすごしていました。
我が家が平安を取り戻すまでのストーリーをお話しします。
気性の激しい主人
主人と私は中学時代からの幼なじみです。主人は当時から、地元で有名な「暴れん坊」。社会人になってからも、外でお酒を飲むと、決まって他のお客と喧嘩を始める人でした。
「なんやお前! 表出ろや!」
主人は力自慢で負け知らず。最後に地面に沈むのは、いつも相手の方でした。
(またや。ええかげんにしてほしいわ)
喧嘩のたびにうんざりしましたが、そのうち落ち着くだろうと思い、主人が27歳、私が28歳の時に結婚したのです。
結婚―暴言を吐く夫
結婚後は、2人で食肉卸の会社を始めました。子供も次々と3人授かり、子育てに仕事に、朝から晩まで働き詰めの日々。やがて従業員を雇うようになると―。
「そんなことも覚えられんのかボケ!」
容赦なく怒鳴りつける主人。「そんな言い方せんでも」と、私も思わず口をはさみます。
「うるせぇっ、 おまえは黙っとれ!」
激する主人。顔つきも変わり、切りつけるような言葉を次々と浴びせます。
夫の怒りで家庭は地獄に
主人の怒りは家でも爆発。仕事が思うように進まなかった日は特に、おかずの品や箸の置き方にまで因縁をつけてきます。
「おかずがないやんか!」
「こんなに並べてあるやろ」
「肉がないやろ、肉が! 分からんのか!」
あまりの理不尽さに、私も怒鳴られる一方ではいられません。
「そんなことで怒鳴らんといて!」
「なんやお前!」
バキッ!と携帯を折って床に叩きつける主人。主人は物に当たるため、わが家の壁やテーブルは、穴だらけでした。
幸福の科学に入会
そんなある日のこと。集金の合間に書店に立ち寄ると、1冊の本の題が白く光って見えました。それが、 幸福の科学 の『 仏陀再誕 』という本でした。私は思わずその本を買って帰り、主人や子供が寝静まってから読み始めました。
その時の感動は忘れられません。そこには、人が生きる意味や、正しい心のあり方などが、心に染み入る言葉で語られていたのです。
主人にも読んでもらおうと思いました。しかし主人は、「アホか! 宗教なんて弱い人間がすがるもんや!」と一蹴。私は仕方なく、1人で幸福の科学に 入会 したのです。
「悪霊を追い出さなあかん!」
幸福の科学の「仏法真理(ぶっぽうしんり)」を学ぶうち、人間の魂は永遠の生命を持つことや、間違った心で生きた人が死後、「悪霊」となって地上の人間に取り憑き、人々を不幸にしている事実を知りました。悪霊に憑依された人は、人が変わったように怒ったり、他人を攻撃する特徴があるそうです。
「それ、まるでパパやん! 悪霊の影響やったんか・・・」
さらに、悪霊に憑依される原因は本人の心にあり、「波長同通の法則」といって、怒りや憎しみ、猜疑心などを持っていると、同じ心の悪霊を引き寄せてしまうというのです。そのため、お祓いなどで悪霊を取っても、仏法真理に沿って自分の心を変えない限り、悪霊は戻ってきてしまうというわけです。
「家の中から悪霊を追い出さんと―。パパも仏法真理を学んでくれたらなぁ」
まず、私が変わろう
主人に変わってほしいと思いましたが、仏法真理では、「まず自分が変わることが大切」と教わります。
「パパのいいところって何やろ?」。そう考えてみると、主人は1日中、家族のために働いてくれています。普段は子供を釣りやテーマパークに連れて行ってくれる、家族思いの優しい人です。帰宅した主人に心を込めて伝えました。
「パパ、いつも働いてくれてありがとな」
主人は、さかんに照れながらも嬉しそうでした。私は主人の好きな肉料理を毎回作るなど、主人の喜ぶことを実行しました。すると、いつもなら爆発する場面でも、落ち着いていることが多くなったのです。
荒れつづける夫
そんな努力を続けて2年ほど経った頃。「ママは最近、俺の気持ちが分かるようになったやないか」と言ってくれるようになり、主人が幸福の科学に入会したのです。
(よかった! これでわが家も安泰や)
―しかし、現実は甘くはありませんでした。
「こんなもん食えるか!」
虫の居所が悪いと、お膳に並べた料理をぶちまける主人。クモの子を散らしたように自分たちの部屋へ逃げ込む子供たち。それが度重なると、私も我慢の限界です。
「ほんなら食べんでええわっ」。私も流しに料理を叩きつけます。怒り狂った主人が壁に鉄拳を打ち込むと、中の耐火ボードまで破壊されました。まさに生き地獄―。
泣きながら車で走った夜の街
そんな時、私は車で家を飛び出し、夜道を運転しながら大声で泣きました。カーステレオからは 大川隆法総裁 のご法話が聴こえてきます。
「大事なことは、心に曇りをつくらないこと、毒を食わないことです」「他人の心は変えられなくても、自分の心を変えることはできます。しかし、自分の心が変わることによって、そこから発散される善念、善なるエネルギー、光が、実は他人を変えていくのです」 (『 理想国家日本の条件 』より)
ご法話を聴いていると、不思議と心が鎮まっていきます。
(そうや。私まで心を乱しとったら、それこそ悪霊の思う壺や。負けられん! どんな時も仏の教えを守っていこう)
主人と喧嘩しては家を飛び出し、ご法話を聴いて気を取り直して家に帰る。そんな生活が数年続きました。
まさかの子宮破裂!
「い、痛い・・・!」
それは突然の出来事でした。ある日、下腹部に激痛が走り、大量に出血。私はその場に崩れました。意識がもうろうとするなか、なんとか車を運転して病院へ行くと―。
「Tさん、原因は分からないけど、子宮が破裂しています。絶対安静。入院です」
医者はそう言いますが、仕事は休めません。重たい体を引きずりながら家に帰り、仕事を続けました。主人の言葉の毒を溜め込んでいるから、病気になったのだと思いました。
心が病気を作っていた
そんなある日、幸福の科学の書籍の中に、こんな言葉を見つけました。
「ご主人が怒ったとしても、それはほんの3秒や5秒です。このことを、奥さんは1日24時間、忘れないわけです」 (『 人生の発見 』より)
ハッとしました。まさしく私のことです。
確かに、主人は一日中怒鳴っているわけではありません。私が怒鳴られた場面を反芻(はんすう)し、恨みを募らせていたのです。
そう気づいたら、主人を恨む心が、ふっと解けたような気がしました。心の持ち方が幸不幸を分けることを、身を持って知ったのです。
研修で激変した夫
私は、主人にも心を変えるきっかけを得てほしいと思い、 総本山・日光精舎 の「八正道研修」(※1)に参加することを勧めました。
嫌々出かけた主人でしたが、帰ってきた時は見違えるほど清々しい表情をしていました。そして、「人のいいところを3つ見つける」など、研修での決意を書いたカードを、見せてくれたのです。
「研修受けて気づいたんや。俺は人に対する感謝が足りん。だから、感謝することを忘れんよう、紙に書いて持っとくわ。もし俺が忘れてたら、言ってくれよ、ママ」
その日から主人は、従業員に注意する時も言葉を選んだり、怒りをぐっと我慢したりと、自分を変える努力を始めたのです。
※1 自分の心や言葉や行いを、8つの項目に沿って反省し、自分を見つめていく研修。
祈りの力で悪霊を飛ばす
しかし、しばらくすると主人はまた、以前の姿に戻ってしまいました。
主人が暴れると、私と子供たちは2階に上がり、声をひそめて「悪霊撃退の祈り」(※2)をあげます。
「主よ 我に 悪霊撃退の力を お与えください・・・」
すると突然、階下から叫び声がします。
「祈るなー! 気持ち悪いー!」
お祈りの声が聞こえるはずはありません。祈りの力を受け、悪霊が苦しんでいるのだと思いました。
お祈りを終えて下に行くと、主人はすっかりおとなしくなっています。
「パパ、さっき何であんなに怒ったん?」
「うん、何でかなぁ? よう分からん」
(憑くと憑かんとでは、こんなに変わるんや!)
※2 三帰誓願者 に授与される『 祈願文① 』に所収されている祈り。読む者の信仰心の強さに応じて、悪霊の影響を断ち切る力が与えられる。
焼け落ちた工場
そうして、一進一退の闘いをくり返すなか、私は40歳を過ぎて4人目の子供を出産しました。末っ子の可愛いさに喜ぶ反面、体はとても疲れやすくなりました。いつもなら聞き流せるような言葉でも、疲れた身には突き刺さります。
(この人は何も気遣ってくれん。もう限界や。離婚した方が楽や)
仕事は事務員に任せ、私は家事と育児に専念。主人がどんなに怒っても、取り合いませんでした。
私が離婚を決意して数カ月ほどたった頃。夜に突然、家の電話が鳴りました。
「大変や! あんたの工場、燃えとるで!」
家と工場の間は、車で5分ほどの距離です。駆けつけた時、工場はゴーゴーとうなる真っ赤な炎に包まれ、私たちの目の前で、無残にも焼け崩れていきました―。
消火が終わり、焼け跡に足を踏み入れると、点々と光っている物があります。不思議なことに、幸福の科学の根本経典である『 仏説・正心法語 』や宝具だけは、全くの無傷で残されていたのです。それだけは邪悪なものも手出しができなかったかのようでした。
焼け跡を見つめる主人の顔は、「憑き物が取れた」ように、しっかりと前を見つめていました。
「お客様に迷惑かけんよう、最善を尽くそうな、ママ」
悪霊にそそのかされていたのは私
夜が明けると、火事を知った知り合いが、次々と駆けつけてくれました。
「ほんま大変やったなぁ。大丈夫か?」
お金や食べ物を差し入れてくださったお得意さん。冷蔵庫を貸してくれた同業者。多くの人の厚意に助けられ、近くの工場を借りて、仕事を続けることができたのです。
私は火事の前に、主人を見限ったことを悔やみました。そんな気持ちになった私こそ、悪霊にそそのかされていたに違いありません。
パパ、辛かったんやね・・・
私は主人のことを理解するため、主人が育った環境に思いを巡らせてみました。主人の両親は、気性が激しい方々だったと聞いています。主人が赤ちゃんの頃、夫婦喧嘩で父親がふり下ろしたビール瓶が頭を直撃し、大怪我をしたこともあったとか。言葉もきついのが当たり前。幼い主人は何を感じてきたのでしょう・・・。
「今はあんなに強がっているけど、辛かったやろなぁ。かわいそうやったなぁ」
主人の気持ちを考えつづけていくうちに、自然と主人を恨む気持ちが薄らいでいきました。むしろ、主人の心の傷や苦労の多い人生を、丸ごと抱きしめてあげたいと思うようになったのです。
すると、主人にも変化が現れました。
「ママいつもありがとう。感謝しとるわ」。そんな言葉をかけてくれます。
夫婦は本当に合わせ鏡で、愛と信頼があると、悪霊は入ってこれないのだと実感しました。
念願の新工場建設
その後、主人は自分から研修に参加するようになりました。研修での気づきを、ノートにたくさん綴(つづ)ってきます。
「相手を理解できずに、猛烈に批判し、他の人を不愉快な気持ちにしてしまう自分が、今、すごくダメであると痛切に思います」
「我が強いから、相手を認めることができないんだろうなー。自分だって賞賛されたら嬉しいくせに。常に賞賛する努力をしないといけないなー」
主人は研修を通して、どんどん変わっていきました。それに呼応するように仕事の面でも道が拓かれていき、たくさんの方々の協力を得て、ついに念願の新工場を建設できたのです。そこで、地域の皆様への恩返しの思いを込めて、新工場の一間を幸福の科学の布教所とさせていただきました。
遠ざかっていった悪霊
それからの主人は、昼休みに布教所でお祈りをしたり、心をふり返ったりするようになりました。
「祈りはええなぁ。心が落ち着く。イライラする自分がちっぽけに思えるわ」
主人が自分の心を調(ととの)えるにつれ、悪霊の影響も影をひそめていきました。周りの方にも「すいぶんおだやかな顔になったな」と驚かれるほどです。
結婚してから、かれこれ20年以上、地獄のような日々を乗り越えてこられたのは、仏法真理のおかげであると確信しています。
私たち家族を救い、導いてくれた幸福の科学の信仰を、たくさんの方々にお伝えしていきたいと思います。
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