お客様の幸せが私の一番の幸福です。—仕事の挫折や母子の葛藤を通して知った「利他の心」—
(最終更新: )
仕事の挫折、母の介護を通して学んだ「与えきりの愛」
多くの人が経験する、仕事の挫折や親の介護の苦しみ。そのなかで、Tさんがつかんだ「どんな環境からも幸せになる道」とは。
月刊「幸福の科学」396号 より転載・編集
閑古鳥が鳴く店頭で・・・
(ああ、今日もお客様が来ない・・・・・・)
今から14年ほど前、私は健康器具や健康食品を販売する会社に転職し、新店舗の店長として着任しました。ところが、1日の来客数は20名にも満たず、店は閑古鳥(かんこどり)が鳴く状態が続いていました。
(何とかしないと・・・・・・)
この業種は、お客様のほとんどが口コミで来店されます。私は評判を上げようと、精一杯接客しましたが、なかなか集客にはつながりません。ついに、商品をリヤカーで引いて、駅前で“客寄せ”をやりましたが、結果はさっぱりでした。
(一体、何がいけないんだろう・・・・・・)
途方に暮れる私に、妹が幸福の科学 の支部 に行くことを勧めてくれました。妹は幸福の科学の信者で、時折、本を送ってくれるので読んでいましたが、私自身は入信する気はありませんでした。しかし、行き詰まった状況を何とか脱したい一心で、思い切って支部に行ってみたところ、支部長さんと話すうち、自分を変えるにはきっかけが必要だと感じたのです。
(ここなら、何かつかめるかもしれない)
そこで私は、三帰誓願 (さんきせいがん)(※1)し、幸福の科学に入信させていただきました。
※1:仏(ぶっ)・法(ぽう)・僧(そう)の三宝(さんぽう)に帰依(きえ)し、幸福の科学の信者になることを誓うこと。
回り始めた運命の歯車
翌日から、三帰誓願式でいただいた「正心法語 」(※2)という経文を読むことを、毎朝の日課にしました。すると、次第に私の心境が変わり始めていったのです—。
例えば、ある日の接客中のことです。
「店長さん。私、肩が痛くてねぇ・・・・・・」
「ああ、それはおつらいでしょう。どんな時に痛みますか—」
今までの私なら、すぐにい肩凝りに効く商品の説明に入っていました。しかし、入信して「正心法語」を読み始めてからは、「この方をもっと深く理解したい」という気持ちが湧いてくるようになったのです。
じっくりとお話を伺うと、「肩の痛み」の奥には、「肩が痛いことで、家族に迷惑をかけるのが心配でつらい」という心労があることが分かり、その方の“本当の悩み”に気づけるようになりました。
(今までは考えもしなかったな・・・・・・)
それまでの私は、数字や評価ばかり追いかけ、お客様の「心」を何も理解していなかったのです。
(お客様が増えないのは、結局、自分の思いに原因があったんだな—)
以来、お客様の「心」を理解しようと努力していくと、来客数が日に日に増加。半年後には、1日に200名以上が来店される全国でもトップクラスの店舗になりました。
※2:入会・三帰誓願者に授与される、幸福の科学で一番大切な経文。
介護の苦しみの始まり
仕事が軌道に乗り始めたころ、私にとって人生を変える大事件が起きました。
同居している母が洗濯物を干そうとして転倒し、大腿骨(だいたいこつ)を骨折。退院後は、日常生活に介護が必要になってしまったのです。
(だから、言ったのに・・・・・・!)
母はリウマチで体が不自由だったので、常々、「危ないから、洗濯物は俺が干す」と伝えていたのです。しかし、私の言うことを聞かず大けがをしたので、自分から要介護になった母に憤(いきどお)りすら覚えました。
というのも、母の介護は本当に大変で苦痛だったからです。
「母さん、服着せるから足上げて」
「あたしは、そんな服着たくないよ。もっと別の持ってきてちょうだい!」
出勤前の忙しい時間に、母は「あれは着たくない」「これは嫌だ」と言って、毎回私を困らせました。そして帰宅後は、仕事で疲れているのに、母の愚痴(ぐち)を延々と聞かされます。ヘルパーさんの悪口、宅配弁当の不満。挙句(あげく)の果てには・・・・・・。
「あたしがこうなったんも、あんたが苦労かけるからだ!」
「なんだよ、こんなにやってあげてるのに文句ばかり言って!」
私も厳しい言葉を返したり、ときには手を上げてしまったりすることもありました。ニュースで介護家族の悲しい事件が報道されることがありますが、とても人ごととは思えませんでした。
そんな苦しい日々でも、お客様に平静な心で接することができたのは「正心法語」のおかげだと思います。職場で毎朝、この経文を読んでいると、心の苛立ちやモヤモヤが鎮(しず)まるので、本当に助けられました。
忘れていた「母の愛」
そんなある日、癒しを求めて東京正心館 (※3)を訪れたときのこと。本棚の『限りなく優しくあれ 』という書籍が、なぜかキラキラ光って見え、手に取ってみました。
「私の唱えている愛は、他の人に差し出す愛、『与える愛』です。『自分の私利私欲にとらわれることなく、いかにして、誠意を尽くし、心の底から優しく、深く、他の人に接するか」ということを、私は説いているのです。」
(えっ・・・・・・)
書籍を開いて読んでみると、神仏の圧倒的な光が胸の中に流れ込んでくるような衝撃を受けました。それは霊的な感覚だったと思いますが、神仏の「限りない愛」「与えきりの愛」を感じて、私はその場で号泣してしまいました。
(俺は母さんに、少しも優しくしてなかった・・・・・・)
私は、母の介護をしながら、内心では憎しみさえ感じていた自分が、いかに神仏の御心(みこころ)とかけ離れていたかに気づいたのです。
(これじゃダメだ。もっと純粋に、与えきりの愛に生きられる自分になりたい)
自己変革を誓った私は、幸福の科学の精舎 (しょうじゃ)に通い「生涯反省」を始めました。心を鎮めて過去を振り返ると、いろいろな場面が浮かんできます。
私が中学1年の時に父が亡くなり、母が女手一つで私と妹を育ててくれたこと。私が社会人になった後、仕事に失敗した時や、転職の時、集客に悩んでいた時も、いつも私を気遣い、声をかけてくれたこと・・・・・・。
(俺は、母さんから与えてもらうばかりだったんじゃないか。なのに・・・・・・)
私は、愚痴しか言わない母を「感謝一つできないのか」と責めていましたが、むしろ、私自身の感謝が足りていなかったのです。
(母さん、ごめんな・・・・・・)
以前は「小うるさいお節介」としか思えなかった母の言葉のなかに、「愛」を感じられるようになりました。
「母さん、いつもありがとな」
「私こそいつも迷惑をかけるね。本当にありがとう―」
私の心が変わるにつれ、母も次第に柔らかくなり、数年後には、今までの状況からは考えられないほど、穏やかで温かい関係になっていたのです。その後、母は2016年3月に帰天しましたが、最後はお互いに感謝の言葉を伝え合い、安らかに送ることができました。
※3:東京都港区にある、幸福の科学の礼拝・研修施設。
愛から始まる本当の幸せ
現在私は、日々数百名のお客様と接するなかで、介護の相談を受けることも多くあります。母の介護を経験したことで、より親身になってお悩みを伺うことができるので、ありがたい経験だったと感謝しています。
私は、「仕事の挫折」や「母との葛藤」を宗教修行を通して乗り越えるなかで、「利他の心」に目覚めることが、本当の幸せにつながり、仕事の成功にもつながっていくことを学びました。
私は今、お店の商品による体の治療だけでなく、お客様の「心のケア」もさせていただけるよう努めています。また、仕事でご縁があった方に、幸福の科学の教えをお伝えし、「利他」や「感謝」の幸せを伝えています。私にとって、皆さまの幸せに貢献できるこの仕事が、自分の「天職」だと思っています。
「感謝し、他人にお返しをしていきたい」という気持ちを持っていれば、どのようなことをしたとしても道は拓けるし、周りの人も助けてくれるようになります。
『鋼鉄の法』212ページより