仕事も人生も「利他の心」が大切なんだと思えるように
順調だったはずの経営が一転
「おいH、ちょっと、銀行から借り入れ起こそうか」
ある日、自社の経理を任せていた2番目の兄からそう告げられました。
「ああ、そうかい。分かったよ」
当時、私は空調設備を請け負う会社を経営し、営業から図面作成、現場監督、職人の養成などを一手に引き受け、働きづめの毎日を送っていました。社業は順調で、蓄えも増えていたので、経理関係は兄に任せっきりにしていたのです。
しかし、兄は度々銀行からの借り入れを提案してくるようになり、やがて、経理事務担当の社員から、もっと借り入れを起こさなければ、会社の事業が回らなくなっていると知らされました。
これはおかしいと思い、会社の財務状況を詳しく調べると、兄が会社のお金に手を出し、接待や飲食や車の購入費等に、お金を注ぎ込んでいたことが分かりました。それらの借金を合わせると、なんと一億円を超える額にのぼっていたのです。
(大変なことになってしまった…)
借金の返済期日が迫っていました。私は兄を解雇し、銀行からお金を借りて返済にあてる一方、収入を増やすために必死で働き続けました。しかし、払っても払っても、次の返済に追い立てられる日々—。
そんな状況で2年、3年と努力しましたが、ついに、苦渋の決断をしました。
(もう、会社をたたむしかない)
今までついて来てくれた従業員には、他の仕事を探してほしいと伝えました。
「ごめんなあ。こんだけ頑張ってくれたのに、本当にごめんなあ」
申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
私のように、多額の借金で倒産した経営者は、誰にも相手にされなくなります。同業者や親戚に会っても身の置き場がなく、心の底から孤独を感じました。
(死んだほうが楽なんじゃないか…)
しかし、今私が死んだら、家族や親戚にもっと迷惑がかかることだけは確かです。
どん底で見つけた信仰の希望
八方塞がりで途方に暮れていた時、妻が私にこんな言葉を投げかけてくれました。
「お父さん、大丈夫よ。神様はね、その人が乗り越えられないハードルは、絶対に与えられないんだって」
「—え?」
妻の言葉に、不思議な力を感じました。
妻は幸福の科学の熱心な会員で、教えを学び、活動に参加していました。私も妻に言われるままに名前だけ連ねていましたが、宗教に興味はありませんでした。
しかし、人生に行きづまり、頼るものが何もなくなったとき、
「神様は必ず、見守ってくださるから—」
そう言って、私を一切責めずに励まし続けてくれる妻の信仰心が、挫(くじ)けそうな私をしっかりと支えてくれたのです。
(一度、きちんとお参りに行こうか…)
そう思い立ち、私は妻と娘と共に、栃木県にある幸福の科学の総本山・正心館へ参拝に行きました。
「宗教に入っていてよかった」
正心館の礼拝堂のドアを開けると、広い空間の奥に、御本尊のエル・カンターレ像が安置されています。その前に進み、目を閉じて、静かに手を合わせました。すると、次第に、大きな光の手に包まれているような、なんとも言えない安心感がこみ上げてきたのです。
(ああ、温かいなあ—)
なぜか心からホッとして、一億円の借金を忘れたわけではないのですが、身を任せるような心境に変わっていきました。
(…なんとかなるんじゃないか)
負債をすぐに解決することはできませんが、心に、未来への希望が生まれました。
(宗教に入っててよかったなあ…)
それが正直な気持ちでした。私はその時、確かに救われたのだと思います。
「『いかに多くの負担に耐えうるか』という鍛錬(たんれん)が人間を伸ばしていきます。したがって、困難や失敗、挫折のなかにあっても、『これは自分を鍛えてくれている材料なのだ』と思って頑張ることが必要です。」
(大川隆法 著『繁栄の法』 より)
私はそれまで、幸福の科学の教えを積極的に学んでいませんでしたが、苦境に立って初めて、この教えが今の自分に必要なんだと気づきました。大川総裁は、人生の苦しみを解決する心の教えだけでなく、仕事や経営で成功し、経済的に繁栄していくための教えも数多く説かれています。これからは、この教えについていこうと決意を固めました。
(兄を責めるのはやめよう。兄の放蕩(ほうとう)を見抜けなかったのは、結局、私自身の甘さが原因だ。全部自分の責任として受け止めて、ゼロからやり直そう)
マイナスからの再出発
しかし実際には、どこかに就職して、一億円もの借金を返済するのは大変困難です。
「もう一度、事業を立ち上げて、成功させるしかない」
同じ業種で再起することを決めた私は、以前の取引先をまわり、再度仕事をいただけるよう、頭を下げて頼み込みました。
妻は、手が足りないときには現場を手伝ってくれたり、食事どきには大川総裁の書籍を私に読んで聞かせてくれたりしました。
「お父さん忙しいから、私が代わりに読んであげる。聞いてね」
「自分の幸福と他の人の幸福を貫くものは『奉仕の心』です。『世のため、人のために役立ちたい』と常に願って生きることは、自分の繁栄のためでもあり、同時に社会の繁栄のためでもあるのです。」
(大川隆法 著『繁栄の法』 より)
信仰を持つ前の私は、正直言って、「どれだけ自分が稼げるか」という考えしかありませんでしたが、大川総裁の教えを学んでいくうち、仕事も人生も「利他の心」が大切なんだと思えるようになりました。
(今日も、お客様に喜んでいただこう)
「世のため、人のため」と思い、ご近所の水漏れ修理から、実現の難しい工事の依頼まで、どんな仕事も断らず、精一杯要望に応えました。すると、難しい仕事が難なく進んだり、予想外に大きな利益が得られたりと、仕事の歯車が順調に回り始めました。
信仰の大切さに目覚めた私は、幸福の科学のコザ支部で、信者の皆さんと法談(※1)をするようになりました。人生の悩みを打ち明け、仏法真理の学びを教え合うことで、問題解決のヒントを得ることができたのです。
※1:仏法真理の学びを語り合い、共有すること
奇跡のリバウンドへ
巨額の借金の返済を目指して努力していた私でしたが、毎日に祈り、教えを学び、「仕事を通して社会に恩返ししよう」と励んでいくうちに、お客様が増え、営業しなくても仕事が舞い込むようになりました。やがて、新しい社員を雇い、事業が拡大していったのです。利他を真剣に願った仕事は、神仏が応援して下さることを実感しました。
そして、返済に20年はかかると思っていた一億円の借金を、前倒しでなんと13年で完済することができました。今では何年も先まで、空調工事の予約が入っています。
かつて、会社のお金に手をつけた兄は、3年前に病で他界しましたが、信仰に向かう機会を与えてくれたことに感謝し、幸福の科学で供養させていただきました。
私は今、「信仰心を持って他の人の幸福のために仕事をすること」が本当に幸せです。これからも妻や法友(※2)と、大川総裁の教えを伝え、幸福を広げていきたいと思います。
※2:同じ法を学び、学びについて語り合える仲間のこと。
今、あなたのなかに、あるいは、あなたの周りに、あなたの家庭に、あなたの家族に、あなたがしている仕事に、まさにそのなかにこそ、「繁栄の種」はあるということです。
(『鋼鉄の法』 第一章「繁栄を招くための考え方―マインドセット編」より)